苦楽園大丸地区道路管理組合

 

全道路の市道への移管が最終目標

現今村市長の議員時代の一般議会質問

苦楽園大丸地区道路の市への移管について

最後の質問、5点目は、苦楽園大丸地区道路の市への移管について、です。

くだんの土地は昭和35年に(株)大丸土地によって分譲開発が始まった苦楽園四番町と三番町にまたがる住宅地で、現在約200世帯、750名あまりの住民が住んでいます。平成13年の(株)大丸土地の倒産後、地区住民が(有)苦楽園大丸地区管理会社を出資設立し、水道施設と道路を取得、平成17年に水道施設の水道局への移管を完了したのち、道路管理組合が設立され、道路の移管運動が始まりました。管理組合の活動は、3,000mに及ぶ全道路の市道移管を最終目標としていますが、そのためには、たくさんのハードルをこえなければなりません。それ以前の喫緊の課題としては、舗装や雨水管や橋梁の老朽化改善、特にそれらが、現在は私道であるためにすべて管理組合の責任でおこなわなければならない状態になっていることがまず最初の大きな問題です。市道移管のためには、道路の位置の確定のための測量や道路と全戸との境界確定作業が必要となってきます。また、市道に移管するためには「私道の市道編入に関する基準」に定められた要件を満たしていなければなりませんが、行き止まり道路、幅員4mに満たないなどの理由で、その基準を満たさないことになる約2,000mぶんの道路をどうするかという問題が次に出てきます。また、市道移管に関連する経費も大きな問題です。道路台帳作成や法務局の調整の作業だけでも多額の経費が必要です。さらには、市道の基準に沿ったものにするため側溝の造成、道路面の平滑化、段差の解消、橋梁の補修、ガードレールの取り替え、雨水管の整備など、市道認定するために必要な多くの土木工事にも数億円規模と思われる多額の経費が必要になります。このすべてを住民が負担するというのは現実的ではありません。そんななか、道路管理組合は市に対して市道移管の要望を続けておりますが、この問題を、現在の市の体制とルールの範囲で解決しようとするのは非常に困難です。そのため、苦楽園大丸地区道路の課題と他の地域にある「市道認定を希望する私道」の案件との整合性をとるために、単なる地域要望ではなく、事情の特殊性を鑑みて特別な市政課題である、とする必要があります。また、この案件には、道路の安全に関して道路補修課、各種土木構造物の保全に関して土木管理課、雨水管の保全に関して下水河川課、境界明示や道路台帳づくりに関して土木調査課、急傾斜法面の保全や新設道路等の許可基準に関して開発審査課、また、防災危機管理局など、考えられるだけでも多くの部署が関係しています。明確な責任者のいない各部署の職員の寄り合い所帯では機動的な政策推進は困難です。政策的課題と位置づけて、震災復興期の「区画整理事業」のように、統轄して対策する部署を設置する必要があります。また、この道路を市道移管するためには、「私道の市道編入に関する基準」の条件緩和を検討しなくてはなりません。これは、国や県などが定めた基準ではなく、あくまで国の方針を参考に市長が設置するルールです。恣意的な基準の運用はあってはならないことですが、政策課題であるならば、この「基準」を機動的に変更する必要はあります。例えば、「基準・第2」、市道編入する道路の構造等に関する要件を限定列挙した項目の最後に、「隣接住宅所有者の責任ではなく、私道所有会社の倒産等により、その管理に支障をきたしている場合等で、市長が特別に認めた場合はこの限りではない」などの但し書き規程の挿入によって、くだんの道路を市道編入する根拠にすることは可能です。また、市道認定が困難な場合は、「公共土木施設」として市が管理する手法もあります。これは、宅地開発などで発生した行き止まり道路などを開発工事完了後に移管を受けて市が管理する一般的な手法です。地域住民の求めるものは「市道移管」ですが、それが困難な場合でも、公共土木施設として認定するならば、市の管理にすることは可能です。さらに、先ほど述べたように、課題解決のための土木工事等のために予算を確保することが必要です。当然、単なる私道の整備のための土木工事の予算を市が措置することはできないため、この道路を市道編入する方針、もしくは、公共土木施設として認定する方針を市が明確にする必要があります。特に、まず雨水管の調査と橋梁の調査、場合によっては改修は緊急に市がおこなうべきだと考えます。

苦楽園大丸地区の道路の市道移管を市の重要政策課題として位置づけた上で

  1. この課題を集中的に解決するための部署を設置するべきではないか
  2. 私道の市道編入に関する基準」を改正し、「市長が特別に認めた場合はこの限りではない」と変更するなど、くだんの道路のすべてが市道編入可能になるようにするべきではないか
  3. 市道編入、もしくは基準の改正が困難と判断するのであれば、公共土木施設として市に移管するなど、すべての道路を市が管理する他の方法を考えるべきではないか
  4. 市道編入の議論を始めるのに必要な測量や調査にかかる経費のすべてを住民、つまり管理組合の負担にするのではなく、市が率先してその作業を指導し、また必要な経費の予算措置をするべきではないか
  5. 喫緊の課題として、老朽化の激しい雨水管と橋梁の調査と改修を市がおこなうべきではないか

以上の点について答弁ください。

答  弁

地元協議において、最大の課題となっているのは、施設の管理区分のあり方よりもむしろ移管に要する諸費用の地元負担。すべてを市道に移管することは困難だが、当該地区の私道は、その規模や、開発者が倒産するなどの過去からの経緯を鑑みて、特別な地区であるとの認識をしている。このようなことから、「私道の市道編入に関する基準」を満たさない路線についても、公共土木施設として、本市が管理できる可能性について検討している。土地の確定測量および分筆登記など膨大な費用と時間と労力を要することが予測されることから、国の制度の活用などにより、地元負担の軽減について検討する。なお、雨水管、橋梁などの施設の管理について、現在まで地元管理組合とは協議調整を継続しており、引き続き、市として協力できる範囲について地元と協議をしていく。

意見:土木局の判断できる範囲では最大限前向きな答弁と評価。あとは市長の政策推進の判断のみ。

答弁では、最大の課題となっているのは管理区分のあり方よりむしろ移管費用だとありましたが、これは私の把握している現状と齟齬があります。そもそも規則や基準があるので市に移管することは困難、という入口のところで議論がストップしていると思っております。今回の答弁では、土木局の判断できる範囲で最大限前向きな答弁がいただけたと思っております。しかし、解決難度の高い政策課題について政治判断を避けて現場に押しつけることは、現場に困難と非効率を生むと同時に、解決を遅らせます。この問題が発生してもう10年以上になります。もうそろそろ市としての機動的な対応があってしかるべきだと思いますが、依然として問題の入り口のところで議論は止まってしまっています。これから、土木局長がお答えいただいた課題解決を円滑に推進できるかどうかは、市長・副市長がこの課題を庁内でどういう位置づけにするかに掛かっています。2番目の項目の意見でも申し上げたように、解決を困難にしている理由は、国や県の規制などのどうしようもないものではありません。市は、市の課題解決のためにその権限をじゅうぶんに発揮してください。総じて申し上げます。西宮市役所は、所管課レベルでの課題解決は、ほんとうに一所懸命やってくれていると思っています。限られた権限で、限られた予算で、なんとか住民のためにと思って活動してくれています。西宮市役所に根本的に欠けているのは、機動的な課題解決であり、政策に関する政治的判断です。政策に関する政治判断を避けたまま現場の職員を課題に当たらせるのは、武器を持たせずに兵を戦場に送るような無責任な行為です。彼らは射撃の的になるだけです。課題解決を望む住民のためにも、そして何より課題解決しようと限られた範囲で知恵を絞り、汗をかいている職員のためにも、もう少し政策課題に対して責任を持って判断を下し、組織的に機能していただきたいと要望しまして、私の一般質問を終えます。

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